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  July 2010
Vol.6 No.7
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 ホット情報〈NO.32〉
国際会議開催報告
- 第21 回国際シロイヌナズナ研究会議-

 小林 正智
(理化学研究所 バイオリソースセンター
 実験植物開発室長)

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じょうほう通信 〈No.52〉
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ホット情報  〈NO.32〉

国際会議開催報告 - 第21 回国際シロイヌナズナ研究会議 -
21st International Conference on Arabidopsis Research (ICAR2010)

理化学研究所 バイオリソースセンター 実験植物開発室長  小林 正智
国際シロイヌナズナ研究会議(ICAR)と日本での開催について

20世紀後半より国際連携のもと、シロイヌナズナ研究は大きく発展してきました。その原動力となった組織が国際シロイヌナズナ研究推進委員会(MASC)であり、MASCの主催により最新の研究成果発表が行なわれるICARは、シロイヌナズナの研究者コミュニティとともに拡大を続けてきました。

1965年に第1回のICAR がドイツで開催されたと記録されています。そして1990年代に入り、国際コンソーシアムによるシロイヌナズナのゲノム解析が開始されて以降、ICARは研究発表と交流の場として欧米諸国の持ち回りで、ほぼ毎年開催されるようになりました。そして2000年代に入り、シロイヌナズナ研究が世界に広まったことから、本会議も欧米にアジア・オセアニア地区を加えた3地区のローテーションで開催することになりました。このたび横浜市で開かれた「ICAR2010」はアジア地区で2回目、我が国では初の開催となります。開催準備委員会には、理研を中心に研究機関や大学からの委員も加わり、研究コミュニティをあげての準備となりました。

シロイヌナズナ研究の 節目にあたる会議


写真1

写真 1: "2010 and beyond"をテーマに開催されたICAR2010

折しも今年は、2001年から開始された "Arabidopsis 2010 Project" の最終年にあたります。本プロジェクトでは、シロイヌナズナの全遺伝子に機能の注釈をつけることを目標に、国際協力のもとでリソースや情報の整備が行われてきました。多くの成果をあげた本プロジェクトですが、遺伝子機能解析を目標としたシロイヌナズナのポストゲノム研究はこれで一区切りになる見込みです。そして次の10年は、non-coding RNAやepigeneticsなどシロイヌナズナの豊富なゲノム情報を活用した最先端の研究とともに、シロイヌナズナ研究から応用研究への成果の受け渡しが課題になると考えられています。そこで開催準備委員会では、"2010 and beyond"をテーマとして応用研究分野からも演者を招待し、広く植物研究コミュニティ間の交流を図る企画としました(写真1)。

ICAR2010の開催と成果

6月6日より10日までパシフィコ横浜を会場として開催した「ICAR2010」には、日本を含む世界32カ国より1,305名の研究者が参加し、歴代2位の規模に達しました(写真2)。

 写真 2: メインホールで開催された6月7日のPlenary session

招待講演やポスター発表を含む演題総数は900を超え、システム生物学から作物ゲノム研究まで幅広い研究領域での発表が行なわれました。また特別企画として開催されたNSFの "2010 and beyond" セッションでは研究コミュニティの将来についての討論が行われました。そしてセッションの合間にも、多くの参加者がコーヒーを片手に議論の輪をつくるなど、盛況な会議でした(写真3)。

  写真3: 休憩時間にロビーで議論する参加者

写真2


写真3

写真4

今回の会議で特筆すべきイベントとしては、シロイヌナズナ研究者と作物研究者との情報交換の場としてNBRPの植物リソース、情報、事務局による特別展示企画を開催したことがあげられます。ポスターセッションが行われた7日と8日には参加者が次々にブースを訪れていました(写真4)。このほか、SSH特別ポスター発表企画(スーパーサイエンスハイスクールの高校生による英語でのポスター発表)、市民公開講座なども行なわれ、密度の濃い、充実した5日間でした。

写真 4: NBRPの展示ブースで説明を受ける参加者
植物研究の未来に向けて

既にふれたように、世界のシロイヌナズナ研究は節目を迎えています。次の10年は、これまでに蓄積されたリソース、技術、情報を作物や樹木の研究にどのように活用してゆくかが焦点となります。我が国で開催された「ICAR2010」を契機として、基礎と応用、モデルと作物などコミュニティ間の垣根を超えて、研究者の交流がいっそう深まることを期待しています。■


じょうほう通信  〈No.52〉

快適にインターネットで英文を読もう!

英語のサイトで意味を思い出せない単語を見つけた時、どうしますか?英単語をコピー&ペーストして辞書サイトで意味を調べるかもしれません。しかし、これは意外と手間がかかる作業です。今回は英語のサイトを読む際に、Firefoxで英単語の意味を効率よく調べることのできるツール「ライフサイエンス辞書ツール (以降、LSDツールとします)」を紹介したいと思います。

LSDツールとは

LSDツール (http://www.lsdtools.org/) は、ライフサイエンス辞書プロジェクト(http://lsd.pharm.kyoto-u.ac.jp/ja/index.html)から提供されており、Web ページ中の生命科学用語を翻訳することができる辞書ツールです。ライフサイエンスの英単語に特化しており、9.3 万語の英語用語、10.5 万語の日本語用語を、用例・遺伝子情報などと共に利用することが出来ます。

Fig.

インストール

Firefoxで https://addons.mozilla.jp/firefox/details/12157 にアクセスし、「Firefoxへインストール」ボタンをクリックします (図1)。後は画面の指示に従ってインストールを完了させてください。 (途中、「ソフトウェアのインストール」というポップアップウインドウが表示された場合、「今すぐインストール」ボタンを押して作業を続行してください。)

Fig.

  図1. ライフサイエンス辞書ツール Firefoxアドオンページ

LSDツールのインストールが完了したので、次にLSDツールの設定が正しく行われているか確認します。Firefoxのメニューバーにある「LSD」という項目の、プルダウンメニュー内の「LSD」にチェックが入っていない場合、チェックを入れて下さい (図2)。

Fig.

    図2. LSDツールの設定確認
日本語訳を表示しよう

いよいよ日本語訳を表示させてみましょう。ここでは例として、論文「NBRP databases: databases of biological resources in Japan」で確かめてみます。
Firefoxで http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2808968/ にアクセスしてください。意味を思い出せない英単語にマウスのカーソルを重ねると、意味や使い方が表示されます (図3)。

図

  図3. NBRP databases: databases of biological resources in Japan における「spontaneous」に対する意味・使い方

最後にNCBI Bookshelf (http://www.ncbi.nlm.nih.gov/books) では、ライフサイエンスに関する書籍が無料公開されています。今回紹介したLSDツールを使用して興味のある書籍を読んでみてはいかがでしょうか。    (渡邉 融)