-国内外のバイオリソースを巡る様々な問題や取り組みについて、毎月ホットな話題をこのニュースレターで紹介していきます-


BioResource Newsletter  Vol.4 No.12

■ リソース関連イベント情報:

  詳細

■ リソースセンター紹介  No.29:

・シロイヌナズナから
 広げる植物研究基盤の整備

 

 

 

 小林 正智  理研バイオリソースセンター
 実験植物開発室

じょうほう通信 No.38:

・サーバ仮想化ソフトウェア「Xen」について
 〜 概要編 〜

shigenImage

2008/12/26 


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バイオリソース関連サイトは以下のサイトからご覧になれます。

NBRP http://www.nbrp.jp/
SHIGEN  http://www.shigen.nig.ac.jp/indexja.htm
WGR http://www.shigen.nig.ac.jp/wgr/
JGR http://www.shigen.nig.ac.jp/wgr/jgr/jgrUrlList.jsp
 

  リソース関連イベント情報

 第2回ラットリソースリサーチ研究会
     日時:2009年1月30日(金)13:00 - 17:00
     会場:京都大学  百周年時計台記念会館 国際交流ホール I
 理研BRC国際シンポジウム 「研究基盤用微生物を考える」
     日時:2009年2月10日 (火) 9:30-17:40
     会場:ハイアットリージェンシー東京 (東京都新宿区新宿2-7-2)
 第3回国際バイオキュレーション会議(IBC2009)の開催
     日時:2009年4月6-19日 ドイツのベルリンで行われます。
     詳細はこちらから http://projects.eml.org/Meeting2009


詳細はこちらからご覧になれます。 http://www.nbrp.jp/

 

  リソースセンター紹介  No.29

 

logo

 シロイヌナズナから広げる植物研究基盤の整備

   小林 正智  室長
   理化学研究所バイオリソースセンター実験植物開発室


シロイヌナズナ


 

 

 

   独立行政法人理化学研究所バイオリソースセンター(理研BRC)実験植物開発室では、文部科学省ナショナルバイオリソースプロジェクト(NBRP)の中核機関として「シロイヌナズナ/植物培養細胞・遺伝子」の課題を実施している。本稿では理研BRC情報解析技術室と共同で開発し昨年公開した植物遺伝子の串刺しデータベース、SABRE(セイバー)と、現在開発中のアブラナ科作物の遺伝子データベース、ABRANA を紹介する。


BRC
ホームページ:
http://www.brc.riken.jp/lab/epd/


 


      背 景      

シロイヌナズナ


   高速シークエンサーの普及に伴い、世界ではモデル作物のゲノム塩基配列の解析が急速に進んでいる。ダイズやトマト、ハクサイなど、私たちに馴染みの深い作物のゲノムが次々に解読されて、データベースには膨大な情報が蓄積されてゆく。一般に作物研究においては収量の増加や病虫害の軽減など、産業への波及効果を背景とした研究課題が多い。従って配列から遺伝子機能へと向かう逆遺伝学的な研究手法により、作物の生育や病虫害応答の制御に関わる遺伝子を特定し、その利用を図ることがポストゲノム時代の作物研究であろう。しかし、ゲノムの全領域をほぼ完全に解読したシロイヌナズナとは異なり、作物のゲノム解析は「完全解読」を目標としない場合がほとんどである。またゲノム塩基配列が明らかになったとしても、遺伝子領域を確定するにはcDNAの整備が不可欠である。

                     

   加えてゲノムの配列情報やcDNAの網羅的解析により、有望な遺伝子の候補を発見したとしても、作物でその機能を解析するのは容易ではない。多くの作物では、効率的な形質転換系や遺伝子破壊系統を利用できないし、たとえ形質転換体を作り出したとしても、その栽培には広さと高度な空調機能を兼ね備えた閉鎖系温室が欠かせない。しかも、次世代の種子を採種するまで半年以上待たばならないこともある。そこで鍵となるのが、シロイヌナズナなどモデル実験植物の研究基盤の活用である。


シロイヌナズナ

                     

   植物遺伝子の串刺しデータベース"SABRE"   

   現在シロイヌナズナ研究では、国際プロジェクトにより全遺伝子の機能解明が進んでいる。全てとはいかないまでも、2010年までには過半数の遺伝子に実験に基づく何らかの注釈がつくと予想される。 また、当センターを含め日米欧のリソースセンターからは、全遺伝子の約95%について遺伝子破壊株が、また約70%について完全長cDNAクローンが入手できる。高度に整備されたシロイヌナズナのリソースと情報を活用できるかどうかは植物遺伝子の研究推進に極めて重要であろう。2010年に現在の国際プロジェクトが終了した後、次期のシロイヌナズナプロジェクトにおいても作物研究との連携が大きな課題になると予想されている。

シロイヌナズナ

図1

図1:SABREによる検索結果の画面

 

    このような研究動向を背景として、当センターでは保有する様々なモデル植物のcDNAクローンを、シロイヌナズナのゲノム情報に串刺しするデータベース:SABRE(Systematic consolidation of Botanical REsource)を開発した(図1)。 SABREは、シロイヌナズナの中核的な情報センターであるTAIR(The Arabidopsis Information Resource)が公開しているゲノム情報と、モデル植物のcDNA情報を、配列ベースで対応付けしている。 SABREを使うことにより、利用者は自分が請求しようとする遺伝子 (cDNA)に関して、シロイヌナズナの最新のゲノム情報を参照することが可能になるとともに、シロイヌナズナをはじめとする他植物のcDNAクローン情報も得ることができる。SABREが提供する情報の特徴は、格納されたcDNAクローン全てがリソースセンターに保存されており、直ちに研究に使用できる点にある。現在は、理研BRCに保存されている約44万クローンの情報を搭載しているが、近い将来、関連機関の協力を得て、我が国が開発し国内に保存されている、様々な植物種の完全長cDNA情報を加えてゆきたいと考えている。


   作物研究のモデルデータベース "ABRANA"   

   SABREは配列情報をもとに、植物遺伝子(cDNA)をシロイヌナズナのゲノム情報で串刺ししており、これを使えば植物遺伝子の機能に関するヒントを得ることができる。しかし、植物では多くの遺伝子がファミリーを形成しており、ファミリー中のどの遺伝子が特定の生理機能に関わるのかを、配列情報だけで特定することは困難である。そこで理研BRCでは、SABREに搭載した個々のcDNAに発現情報を付加することにより、高い精度での機能推定を可能にしたデータベースの開発を進めている。このために生物系特定産業技術研究支援センターからの支援を得て、シロイヌナズナと同じアブラナ科に属するハクサイをモデルとして、ストレス関連遺伝子(cDNA)の単離とこれを用いたストレス応答診断アレイの試作を行った。開発中のデータベース:ABRANA (Arabidopsis-BRAssica Network Access)では、取得したハクサイのcDNA情報を、SABREの機能を用いてシロイヌナズナ遺伝子との対応付けを行ない、そこにアレイ解析で得られた発現情報を取り込むことにより、ストレス応答に関わるシロイヌナズナとハクサイの遺伝子の対応付けを高い精度で実現する(図2)。そしてこのデータベースは分子育種への利用にとどまらず、診断アレイと組み合わせることにより、ストレス応答に関する品種診断や、植物免疫活性剤の評価など、農学の様々な研究場面に適用可能である。ABRANAは未だ開発途上であるが、cDNAリソースと目的指向型アレイを基盤としたこのような研究手法は、限定された資金とメンバーでも実現可能であり、関心ある方は下記メールアドレスまでコンタクトされたい。


   ホームページ:http://www.brc.riken.jp/lab/epd/
   事業用メールアドレス:plant@brc.riken.jp


 

図2
図2 : ABRANAの画面イメージ


理研BRCが提供する植物リソース
●シロイヌナズナ種子 (トランスポゾンタグライン、アクティベーションタグライン、FOXライン、野生株・近縁種等)
●植物遺伝子 (シロイヌナズナ、ヒメツリガネゴケ、ポプラ、キャッサバの完全長cDNA等)
●植物培養細胞 (シロイヌナズナT87細胞、タバコBY-2細胞、イネOc細胞、ミヤコグサLj細胞等、モデル植物の培養細胞株)



 

 

  logo     研究者へのお願い

   バイオリソースを使って研究をしている皆様にお願いがあります。
   研究成果を論文として発表する際には、使ったリソースの情報を 必ず Materials & Methods や謝辞などに記載してください。 同時に、リソース入手元への連絡もお願いいたします。
   NBRPでは成果論文の登録サイトを開設しました。 以下のアドレスから簡単に情報を登録することができますのでこちらも是非ご利用ください。

http://rrc.nbrp.jp/


RRC

 


  じょうほう通信  No. 38

    サーバ仮想化ソフトウェア 「Xen」 について  〜 概要編 〜


    サーバ仮想化とは?何に使えるのか?  

   今回はサーバ仮想化ソフトウェアの一つである「Xen」について紹介します。サーバ仮想化ソフトとは、1台のサーバ上で仮想的に複数OSを同時に動作させるソフトウェアの事で、主にサーバのCPUやメモリの有効活用や、サーバ運用に関わる費用を軽減する目的で利用されています。近年のクアッドコアCPU(1つのパッケージに4つのプロセッサコアを集積したCPU)によるサーバ性能の向上や、サーバの低価格化に伴い、利用されるケースが増えています。
   Xenはサーバ仮想化を実現するソフトウェアの中の一つで、ケンブリッジ大学の研究プロジェクトとして始まり、現在はXenSource,Inc からオープンソースとして誰でも自由に使うことが出来ます。Xen を使うことで、1台のサーバで Linux や Windows 等、異なる種類のOSを同時にサービスすることが出来ます。(図1


 

Fig.

    仮想化の方式(ハイパーバイザー型のメリット)  

   サーバ仮想化の方式には大きく「ホストOS型」「ハイパーバイザー型」2種類に分かれます。(図2参照)ホストOS型の代表的な製品として、VM Ware やVirtual PC が有名です。 ホストOS型はインストールが簡単な反面、オーバーヘッドが大きくゲストOSの性能が大きく落ちるため、テスト環境等での限られた環境でしか使用することが出来ませんでした。一方、 Xen をはじめ、最近主流となっているハイパーバイザー型は、ハードウェアの上で直接仮装マシンモニタとしてゲストOS とのやりとりを行うためオーバーヘッドが少ないというメリットがあります。 ちなみに、Xenのソースコードをベースとした製品としてOracle社のOracleVM やSun社のSun xVM Server 等が出荷されています。

図

    Xenのインストールについて  

   以前のXenのインストールでは、Linuxのコマンドライン上から行う必要があったため、UNIXの知識がある程度必要で敷居が高かったのですが、CentOS (Red Hat Enterprise Linux互換のオープンソースOS)のバージョン5で「Xen」がバンドルされたため、インストール・設定がGUI上で行える様になりました。



   今回はここで紙面が尽きてしまいましたが、次回はCentOS5上での「インストール・設定方法」について紹介します。

(生物遺伝資源情報総合センター 系統情報研究室 山川 武廣)   


logo


 


編集後記:  お陰様で今年もニュースレターを12号まで無事発行することができました。折々にホットな話題を提供してくださった皆様に心からお礼申し上げます。世の中の景気は最悪ですが、ナショナルバイオリソースプロジェクトは来年度から補助金化というかたちでソフトランデイングできそうです。 引き続き元気な話題をお届けしたいと、スタッフ一同張り切っております。
    来年も皆様にとってどうぞ良いお年でありますように。(Y.Y.)

連絡先〒411-8540 静岡県三島市谷田1111
国立遺伝学研究所・生物遺伝資源情報総合センター
TEL 055-981-6885 (山崎)
E-mail brnews@chanko.lab.nig.ac.jp