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BioResource Newsletter  Vol.2 No.5


■ リソース関連イベント情報:

 詳細

■ リソースセンター紹介 No.9:

 

・酵母遺伝資源センター(YGRC):
 基礎研究を支える酵母リソースの収集・
 保存・提供事業

 

 

 

 ナショナルバイオリソースプロジェクト酵母
 中核機関代表 下田 親 (大阪市立大)
 サブ機関代表 金子嘉信 (大阪大学)

ホット情報 No.11

・FIMRe (Federation of International
Mouse Resources)

shigenImage

2006/5/29   


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バイオリソース関連サイトは以下のサイトからご覧になれます。

NBRP http://www.nbrp.jp/index.jsp
SHIGEN  http://www.shigen.nig.ac.jp/indexja.htm
WGR http://www.shigen.lab.nig.ac.jp/wgr/
JGR http://www.shigen.lab.nig.ac.jp/wgr/jgr/jgrUrlList.jsp


 リソース関連イベント情報

 20th International Congress of Biochemistry and Molecular Biology
    and 11th FAOBMB Congress

    日程:6月18 - 23日  会場:京都国際会議場
    ※ NBRPポスター展示(19-23日)があります。
    ホームページ: http://www.congre.co.jp/iubmb/index.html

ラット生殖技術の進歩
    日程:10月28日 (土) 9:00-11:00
    会場: 京都テルサ  テルサホール (京都市南区新町九条下ル 京都府民総合交流プラザ)

   詳細はこちらからご覧になれます。http://www.nbrp.jp/index.jsp


リソースセンター紹介 No.9

  酵母遺伝資源センター (YGRC):
    基礎研究を支える酵母リソースの収集・保存・提供事業

    ナショナルバイオリソースプロジェクト酵母
    中核機関代表 下田 親(大阪市立大学大学院特任教授)
    サブ機関代表 金子嘉信 (大阪大学大学院工学研究科助教授)

   酵母遺伝資源センター(YGRC)のホームページにアクセスして下さい。
   酵母遺伝資源センター(YGRC): http://yeast.lab.nig.ac.jp/nig/
   -----------------------

■ 酵母遺伝資源センター(YGRC)から提供しているリソース

      1) 遺伝学研究用菌株 (約2万株)
      2) DNAクローン (約4千クローン)
      3) クローニング用ベクタープラスミド
      4) 各種DNAライブラリー



図1:NBRP / YGRCのホームページ
図1NBRP/YGRCのホームページ

(1) なぜ酵母か?

   酵母は人間に身近な有用微生物として、育種の基礎になる遺伝学研究の長い歴史があります。組換えDNA技術を含め、 様々な実験手法が比較的手軽に使えるため、酵母はもっとも使いやすい実験生物として頻用されてきました。 真核生物のモデルとしての重要性は誰しも認めるところでしょう。 ゲノムプロジェクトも早期に立ち上がり、真核生物では最も早く全塩基配列が決定されました。 さらに、 公開されたゲノム情報をもとに、多様なポストゲノム研究も活発に進められています。 ここ当分は酵母研究の重要性は揺るがないでしょう。


図2:分裂酵母と出芽酵母のDIC写真
(微分干渉法による光学顕微鏡写真)
*DIC:Differential Interference Contract

図2:分裂酵母
分裂酵母

図2:出芽酵母
出芽酵母

(2) YGRCは酵母コミュニティの熱い期待を受けて事業を展開しています。

   酵母研究の発展と共に、酵母遺伝資源(酵母リソース)が爆発的に増加しています。 これらが失われないように保存し、効率よく活用するためにはリソースセンターがぜひ必要です。 我が国は酵母研究の盛んな国として国際的に広く認められています。 国内の酵母研究者からの 「リソースセンターを!」 という声に応え、ナショナルバイオリソースプロジェクト
(NBRP)の支援を受け、 酵母遺伝資源センター(YGRC)が2002年にスタートしました。 多くの酵母研究グループのご協力を得てリソース収集も順調に進んでいます。 また、リソースの分譲依頼も増加中で、 昨年度は提供数が900件を越えました。


(3) YGRCはこんな特徴を持ったリソースセンターです。

   酵母は大きく実用酵母と実験室酵母に分けられます。 YGRCは対象を遺伝研究用の2つの実験室酵母(分裂酵母 Schizosaccharomyces pombe と出芽酵母 Saccharomyces cerevisiae)に絞り、 それぞれ中核機関(大阪市立大学)とサブ機関(大阪大学)が分担して事業を進めています。
   私たちのモットーは「研究者による研究者のためのリソースセンター」です。 したがって、 センターの運営は研究者自身が行っています。 また、国内の主要な酵母の研究室を網羅して酵母遺伝資源運営委員会が組織され機能しています。 委員を通して研究者の声がセンターの運営に反映されます。私たちは何よりも、 酵母研究コミュニティに密着し、 研究に役立つリソースセンターを常に目指しています。


 

図3:分裂酵母の蛍光顕微鏡写真

図3:
分裂酵母の蛍光顕微鏡写真
緑色:細胞膜,
赤色:SPB(スピンドル極体),
青色:核DNA

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(4) YGRCはこんな酵母リソースを保有し、提供しています。

   過去4年間の収集作業により、 菌株、 プラスミド、 遺伝子ライブラリーなど、 かなり充実したコレクションができました。
   分裂酵母は世界的に見ても大きなリソースセンターは存在しません。YGRCの分裂酵母リソースは現時点でも世界最大規模の収集数になっています。 菌株では有性生殖、 有糸分裂、 細胞周期関連の突然変異株のコレクションが充実しています。 また、 ゲノム、 cDNAライブラリーやGFP融合ライブラリーは高品質で定評があります。 平成17度のNBRPゲノム解析事業で行った完全長cDNAライブラリーはシークエンス解析が終了し、 各クローンの同定が急ピッチで進んでいます。 ほぼゲノムを網羅した「遺伝子が割り当てられた完全長cDNAクローンセット」はまだ世界に存在しない貴重なリソースであり、 今秋には公開、 分譲できるように作業を急いでいます。
   一方、 出芽酵母も国内の有力な研究室の協力により、 多数の菌株、 プラスミドが集まりました。 特に、 全ゲノムを網羅したタンパク質脱リン酸化酵素遺伝子の一重及び二重遺伝子破壊株セットは世界唯一のリソースです。 セットでも分譲しています。


図4 : YGRCの組織図

図4:YGRCの組織図


(5) YGRCの酵母リソースはホームページで検索できます。

図5 : 検索、分譲依頼画面

図5 : 検索、分譲依頼画面

   YGRCが保有している酵母リソースはすべてデータベース化してホームページから検索できるようになっています。菌株については菌株名や遺伝子型から検索できます。 また、プラスミドについては挿入遺伝子名、 プラスミドの選択マーカー、 タイプなどから検索可能です。 まだ、 不完全ですが、 文献情報やプラスミドマップなどにもアクセスできます。
    検索の結果希望するリソースが見つかった場合、 オーダーボタンをクリックしてカートに入れ、 送付先情報を入力して分譲依頼することができます。 要するにインターネットでのお買い物の要領です。 オンラインでの依頼後、 約1週間でリソースの現物が届きます。
   寄託者のご理解により、 学術研究に利用する場合には、 ほとんどのリソースは寄託者の事前許可なしに分譲できるようになっています。

(6) YGRCは永続的なリソースセンターを目指してさらなる充実を図ります。

    YGRCはナショナルバイオリソースプロジェクトの援助により事業が進み、酵母研究を下支えする重要な機能を果たしつつあります。NBRPの目標である「2010年までに世界トップレベルのリソース整備を!」を実現することがまず必要ですが、研究者に役立つリソースセンターとして永続的に存在し続ける仕組み作りに努力しています。さらに、今後は海外からのリソースの収集を開始すると共に、国際的な酵母情報ネットワークへの積極的な参画をはかります。「ナショナルからインターナショナルへ」が新たなモットーになるでしょう。


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海外ホット情報 No.11

FIMRe (Federation of International Mouse Resources)

   第4回FIMRe Meetingが5月22-23日、 つくばの理研バイオリソースセンターにて開催されました。
会議の世話役は小幡裕一センター長でした。過去3回の議論とVice Chair personsによる電話会議を通して議論を深めた結果、MOU( Memorandum of Understanding)への合意が得られました。 Meetingでは、各メンバー機関からの活動報告、MTA(Material Transfer Agreement )やHealth Standardに関する各committeesからの報告、 そしてOperation Supercommitteeからの報告などが行われました。 今回特徴的だったのは、 アジアのリソース機関の紹介セッションが設けられたことです。 中国から4名、 韓国、 台湾、 シンガポールから各1名ずつ、 合計7箇所のリソースセンターの紹介がありました。 中国を中心に、 アジア諸国ではマウスリソースの整備が急ピッチで行われているようです。
   会議の詳細については理研BRCのホームページに後日掲載されると思います。 またFIMReについてはBioResource now! vol.1-5にも関連記事があります。 オブザーバーを含めて50名以上が参加し、 そのほぼ半数が海外かいます。 ホスト役を務めてくださった理研BRCの皆様、 本当にお疲れ様でした。


FIMRe Homepage
FIMRe Homepage: http://www.fimre.org/

IMSR Homepage
IMSR Homepage:
http://www.informatics.jax.org/imsr/



編集後記 :NBRP酵母のリソースコレクションが世界一であることは、意外に知られていないような気がします。 今年は海外への情報発信の強化が目標ということで、 当センターも協力させていただきます。 お忙しい中、 下田先生には早々に、 とても判り易い記事を寄稿していただきました。 心からお礼申し上げます。(Y.Y.)

連絡先 : 〒411-8540 静岡県三島市谷田1111
国立遺伝学研究所・生物遺伝資源情報総合センター
TEL 055-981-6885 (山崎)
E-mail BRnews@chanko.lab.nig.ac.jp

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